季節のたより

米国シカゴ商品取引所、ミネアポリス農産物取引所で、小麦の先物取引価格(9月渡し価格)が、7月の頭から、急上昇しています。

今年(2010年)に入って、国際小麦相場は、世界在庫が増したこともあり、ほぼ4$(ドル)代で(やや低めの相場だったと私は思います。)安定して推移してきました。

注)ブッシェルとは、ヤード・ポンド法における体積(容積)の単位で、世界の穀物相場の取引での「量の単位」となります。小麦は、1ブッシェル=約27kgです。)

しかし、7月に入って、小麦の「先物取引価格」が急上昇し、8月2日のシカゴ相場がほぼ7$(ドル)まで上昇、7月の1ヶ月での上昇率は、42%に達しました。

直接の理由は、ロシアの干ばつや欧州の天候要因(熱波など)によって、収穫量減の予測が引き金となり、「小麦輸出国(今回はロシアなど)が輸出規制するのでは」という観測につながったこと、そして早めに買いを起こそうとの思わく(投機筋も含めて)にあります。(このレポート初稿の後、H22年8月6日、ロシア政府は、小麦などの穀物の輸出を、H22.8.15〜12月末まで禁止すると発表しました。)
ただし、この干ばつは、西半球・ヨーロッパ域での状況であり、日本が小麦を輸入している米国・カナダ・オーストラリア域ではないことと、世界の小麦在庫水準はまだ十分高いことから、今のところ日本の輸入量には影響はないという見方が主です。</font color>カナダでは、低温傾向で多湿という天候により、収穫量が当初の見込みより少ない予想はありますが、一方、米国では十分な在庫と今年の収穫量も十分な数量が見込まれていて、今のところ、世界及び米国の在庫は正常な水準にあります。(後述します。)

そこで一番気になる、この10月からの輸入小麦の価格改定について........。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 結論から言いますと、現行価格とほぼ変わらない、と推定します。なぜなら・・・・

現在の日本の輸入小麦価格の改定は、年に2回。4月1日からと10月1日です。 価格算定は、その価格改定月の1ヶ月前からさかのぼって6ヶ月間の日本の買付量と価格の加重平均をとります。したがって、3月〜8月までの平均(ならし)ということになりますので、価格安定期の3〜6月の上に、この7〜8月の上昇分がどれだけ加味されるか、ということで、10月の新価格が決まります。 今回、7月に小麦相場高騰といっても、9月渡しの先物価格ですので、7月・8月の日本の買入価格は今までの相場の流れで若干の上昇傾向程度になりますから、10月には結果的にそう大きく価格は上がらない、ということになります。

この10月(2010年10月)の輸入小麦価格について、あくまで予想ですが、ASWは1〜2%程度の上昇、強力系小麦はほぼ据え置き(4月と変わらず)、薄力系小麦は据え置きか、ほんのわずか下がるかもしれません。(8月の価格推移がわからない現時点(2010.8.5)での「予想」ということにご留意ください。)

問題は、来年4月の輸入小麦価格改定の時には、今年9月〜来年2月の小麦相場が反映されるので、今後の国際相場によっては、改定価格が上がることは予想されます。 価格に影響する現実の小麦在庫は、米国農務省(USDA)によると、今年(2010〜11穀物年度)、世界の小麦生産量は6億5100万トンと、豊作だった去年より2,500万トン程度減るとの見方を発表しているものの、世界在庫は1億8,000万トン程度と年間需要の30%に相当し、米国を中心に世界の小麦在庫は相当高い水準(米国ではむしろ過剰在庫)にあります。ですから、たちまち不足が予想される状況では全くありません。 在庫が十分ある以上、投機筋はどこかで売りにに回る可能性もあり、一段落したら下げ圧力が強まるかもしれません。が、どこで下げ止まるのか.......。

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現在の日本の輸入小麦価格の決め方は、国際小麦相場が急上昇しても、先述のように、過去6ヶ月間の輸入小麦の買入価格と量の加重平均ですから、ある程度ならされるため、相場の急騰がそのまま直ぐに反映して、小麦や小麦粉の価格も急騰するということはありません。これは、日本人の主食である、小麦・小麦粉の価格安定という観点から、日本独自の優れた方式だと私は思います。

2007年〜2008年の世界の穀物急騰時(2008年春には、小麦価格が1ブッシェル=13$近くになり、大豆・トウモロコシも連れて高騰)には、発展途上国の中には、食糧難から暴動が起きたほどでした。 世界では、小麦価格が2倍以上に高騰しても、日本では徐々に価格が上がり、結果的に2年間で1.6倍程度の価格上昇幅でおさまったのです。詳しくは、【どうなる?日本の食糧】 〜小麦と日本の食〜をお読みくだされば幸いです。

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【オーストラリア産小麦(ASW)の状況は?】

現時点(2010.8.13)で、西豪州において干ばつが懸念されているとの情報を得ました。、(日本向け)ASWの収穫が11月頃で、生育期に入る8月以降に、適量の降雨が必要ですので、今後も注意して見ておく必要があります。

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世界の小麦は、国際商品である以上、いろいろな思惑で売り買いされ、相場は常に動きます。 私たち日本人が、毎日食べている、うどんやパンやお菓子などの小麦粉の80%強が輸入小麦であり、太平洋を渡ってタンカーで日本へ運び込まれる、米国・カナダ・オーストラリアの3国の小麦です。

地球規模で進行する異常気象によって、干ばつがいつ世界のどこで起きるかわからない時代。 それによって地域の小麦の収量が減少する場合があり、人口増加と相まって、世界の小麦在庫が、以前より大きく動く時代。 その状況に、直ぐ相場は反応して価格が上昇する世界ネットワークの時代。 グローバル・マネーが投機を目的に、穀物の価格を上下する時代。

つまり、日本人の主食の小麦が、そういう不安定な環境の中にあるというのが現実の姿です。 ただ、「小麦相場が高騰したから、すぐさま小麦粉や加工食品が高騰する」とか「干ばつが起きたから、小麦が不足する」という過剰反応しないことが大切で、原料小麦を購入し加工する立場の弊社は、早く正しい小麦に関する情報を伝えることに努力したいと考えています。


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