「伝統食品のおいしさの科学」出版 ~麺類・第一節<讃岐うどんを多角的に捉える>を執筆(吉原良一)~
2024年7月、日本の伝統食品の美味しさ、歴史、科学的分析等をまとめた「伝統食品の美味しさの科学」(監修 山野善正)が出版されました。(発行所:(株)NTS、2024.07.07初版発行)
弊社 吉原良一は、第二章 <麺類> 第一節「讃岐うどんを多角的に捉える」を執筆しました。
本書の趣旨として、監修者 山野善正氏「発刊にあたって」によると「日本の食文化を考える時、縄文時代まで振り返るのも一考である。・・・時代が進むにつれ、世界の諸地域から食材が移入され、現在でもそれが継続されている。そして和食に取り込むということが行われ、日本人の食に対して貪欲なことがよくわかる。
伝統食の厳密な定義はしがたいが、明治時代以後急激に移入された食材はさておき、それ以前に食した日本独特の食を伝統食として、可能な限り調べて、これらを手掛けている研究者、製造者に執筆をお願いした」としています。
吉原は、「讃岐うどんと小麦の歴史背景」から書き始め、世界でも稀なグルテニン遺伝子を持つ小麦が日本に伝搬し独自の進化をしてきたことが、いわゆる中近東・欧州のパンでも拉麺(中国)でもなく、団子、ひっつみ、ほうとう、うどん(切麺(チェンメン))等の日本独特の「小麦粉生地を切る(ちぎる)」食文化を形成していったのではないかという考えを述べた上で、律令期の讃岐国における穀物生産の状況と「仏教と食」の観点から小麦粉食の始まりの可能性を示しました。
江戸中期、金毘羅祭礼図屏風に描写された路面うどん店の出現に触れ、描かれた3つの工程が現在のうどん製法の基本にのっとっていること(但し、讃岐独自のうどん技術だったであったかは不明である)、その後明治以降、小麦生産と製粉産業の進展状況から、うどんが香川県の庶民の食として本格的に普及した時期を推定しています。
また、近年、讃岐うどんが全国で受け入れられていることの大きな要因に、90年代に顕著になった日本人の食感嗜好の変化への適応、或いはその方向性の合致が重要だったという吉原の仮説を示しながら、長い歴史の中で讃岐うどんの原形から現在までの変遷を明らかにしようと試みています。
手打ちの技術については、讃岐うどんの特徴的な製法と小麦の成分との関連、”そうしなければならなかった”必然性について書いています。昭和40年代以降、香川県はもとより日本のうどん用原料小麦として、市場を席捲したオーストラリア産小麦(ASW)の小麦品種としての特異性(優れた特性)も紹介しました。
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本著の全体の内容は、日本の伝統食品を網羅して幅広い分野の食品をそれぞれの専門家が解説しています。
穀物製品(おはぎ、ぼたもち、すだれ麩、きりたんぽ等)、麺類(讃岐うどん、稲庭うどん蕎麦、そうめん等)、穀類発酵食品(酒類)、豆類・芋類・野菜(加工品)、調味料(味噌、醤油、みりん、しょっつる等)、畜産品、飲料・菓子類等がまとめられ、終章として、「伝統食品のおいしさと食文化」で和食文化の歴史と未来について示唆に富む内容で締め括られています。
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