季節のたより

新年 明けましておめでとうざいます。
去年、当社「ハイブリッド小麦粉シリーズ〜讃岐プレミアム、白鳳など〜」の食品産業技術功労賞受賞(食品産業新聞社:主催)の記事が「麺業界」に掲載されましたので、ご紹介させて頂きます。

記事内容については、こちらをご覧ください。
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去年、2008年は、“時代の裂け目”がいよいよはっきりと現れた年でした。
世界は大きくきしみながら、あるポイントで大転換するものなのですね。
今、私たちはその転換の時期に生きているのでしょう。


他人資本を利用して実態経済からかけ離れた過大な取引により巨大な収益を得る金融依存型の米国モデルがいよいよ崩壊。一昨年のサブプライムを引き金に始まった金融不安が引き金となった世界不況は、米国に根本的な問題があるのか、あるいはグローバル化した経済の負の部分が明らかになってきたのか…

昨年9月 中国は日本を抜き、世界最大の米国の国債保有国となりました。金融不安の情勢の中、米国は国際を増発していますが、中国がドルを買い続けなければドルは急落しかねない、という新たな構図が見え始める中、米国 as No.1の神話が揺らいでいる、という見方は信憑性を持ってきます。

米国型の経済成長スタイルの行き詰まりが露見したようにも見える現在の状況も、少し離れた位置から見てみると、それは表層的なものに過ぎないように思えます。単に経済だけの問題ではなく、人類の作り上げた文明が転換期に達しているのではないかとも思えるのです。

今、地球規模で直面している諸問題として、環境破壊の進展や地球温暖化が挙げられます。これらと因果関係も考えられる、異常気象による穀物生産の不安定化。そして、増加し続ける世界の人口。
世界経済の景気動向の問題だけでなく、食料、資源の分野でも大きな根本的な変化、限界が見えつつあります。たとえば、工業生産に不可欠な鉱物。現在の採掘技術のままでは、金は30年、銀は20年、銅は40年で枯渇するという見方があります。
食料(穀物)の面では、世界で異常気象による干ばつなどの固定化が懸念される地域もあります。加えて、新興国の経済成長と共に人口増加につれて消費量も増加していく中で、必要な量と安全な食料をどう確保し、世界に分配していくのか。
不安をかき立てるのではなく、国家として冷静に将来をみて、今後一層の戦略をもって着実に進める必要があるということでしょう。

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今後の世界のキーワードは、「経済成長」より「資源・食料の分配」の方がより重要になるかもしれません。あるいは、「成長」という言葉の概念が変わるかもしれません。人の心や気持ちの持ち方が変わると、経済は変わります。既に欧州では、サブプライム問題が起きるはるか以前から、従来型の「利益追求型のあくなき成長」に対する新しい経済概念が生まれていると聞きます。

一方、グローバル経済化へと足を踏み入れた2009年の世界はもう後戻りはできません。「相互依存」と「競争」の微妙なバランスをとり、前へ進みながら、新たなルールや規制を世界的レベルで作りあげなければなりません。しかしこれは、大変困難なことです。正反対の利害を同じテーブルに載せてまとめようとするWTO交渉の過去の困難を極める経緯を見てもわかるように。
しかし、粘り強く最適の道を見つける努力は不可欠です。「混沌(こんとん)」は、運命共同体となった地球上のあらゆる国を苦しめ、人類全体から「希望」を奪ってしまうから。パンドラの箱の底には、「希望」が残っているはず。それを求める精神を失ってはいけないでしょう。

今後、日本はさらに、食料と資源の確保を目指して諸外国との投資協定の締結交渉に注力していくことになります。不況の連鎖というグローバル経済のひとつの現実がさらけだされた現状も加わって、今後の世界は一層、国としての「生存基盤」を固めていく流れになるのではないでしょうか。資源や食料に乏しい日本は特にその重要性をいっそう増すことになります。

たとえば、サウジアラビアは、小麦自給の方向を転換し、段階的に小麦生産を減じていき不足分を輸入する計画を進めていると聞きます。理由は、国内の小麦価格の抑制と「水」の有効利用。一国の生存基盤を固めていくためには、食料の自給率向上を進める国もあれば、自国での生産を止めることを選択する国もある。国の事情により、それぞれが戦略性を持って選択していく。そういう時代になったのだと思います。

この2年間、オーストラリア産小麦の購入を通じて私たちが体験したことは、穀物には凶作がありえるという、ある意味当たり前のこと。言い換えれば、毎年十分な量と質の穀物が得られるとは限らないということ。ここ讃岐では昔から、干ばつによる凶作が頻発しており、厳しい農産業の歴史がそのことを示しています。でも、いつのまにか私自身、「穀物生産の不安定さ」という一面を忘れてしまい、いつでも安定した価格で、欲しい時に、欲しいだけ手に入ると錯覚していた…..と自戒したこの2年でした。

国の食料の安全性と安定供給の機能をどうするべきか。国は、どこまで、どのようにそれに関わるのか。
食料における国の機能論とは?新・食料時代の国家貿易とは?

今年は、小麦関連業界も製粉産業など民間側からいろいろな新しい動きが出てくるかもしれません。今まで書いてきたように、食料と資源と、更に加えればエネルギー分野において、世界は新しい時代に移行しつつあるのですから。農産業も製粉産業も「業界」という壁が低くなり、各方面での異業種参入が増えていくかもしれません。

今年も、吉原食糧は食料供給の立場から、新しいコンセプトの小麦粉素材を開発し、ポイントを絞った提案をしてまいりたいと考えています。
まずは、足元から。地元 香川に立脚する製粉企業として、果たすべき役目を自ら考え、実践し、活動してまいります。また、それらを製品の形にして具現化していきます。
新しい皮袋には、新しい酒を入れる・・・そんな気概を持って、2009年を過ごしていきたいと考えています。

今年も吉原食糧の合言葉は、「ワイルドでいこう!」です。
よろしくお願い申し上げます。





(注) 月刊誌「麺業界」の受賞記事は、 (株)食品産業新聞社 (本社:東京都台東区池之端2-1-39/03-3824-9111)
(大阪支局:大阪市北区東天満1-11-15/06-6881-6859 )を転載しています。
<発行所:大阪支局>

R.Yoshihara


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