どうなる日本の食糧

2010年11月14日

西オーストラリア州南部の小麦(日本向けASW)の生産と品質状況を把握するために現地に行ってきました。
まず今年10月末までのこの地域の降雨量は、1900年以来最低を記録しました。


【2010.11.11 西オーストラリアにて 】


特に、小麦の生育期に降雨が観測史上最低量を記録したことで、小麦生産量は大きく減少、西オーストラリア全体のの小麦生産量は1914年以来、最低の収穫量となる見込みです。


=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
注) 今年(2010)度のオーストラリア全体の小麦生産は「豊作」の見込み

ラーメン用などで日本にも輸出される、東オーストラリアの小麦生産地域では豊作の見込み。
オーストラリア全体としては、去年度より100万トン弱多い、2300万トン程度の豊作となる見込みです。
不作地域は、西オーストラリアに限られます。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

(1)観測史上最低の降水量(西オーストラリア州 小麦生産地域)

播種期(種をまく時期)開始頃は、少量の降雨があり何とか持ちこたえ、6月の分けつの時期には、最低必要な降雨があり、何とか乗り切った状況でした。しかし、生育期の7〜9月に観測史上最低の降雨量を記録、小麦の最低必要降雨量を下回り、生産の激減となりました。

今年5月から10月の西オーストラリア州の降雨グラフを見ても、日本向けASW作付地域は、"Very Much Below Average"(平均を大きく下回る)か、" Lowest On Record"(観測史上最低)となっており、オーストラリア全体の中で、ごく一部が異常に低い降雨状態になっています。

ちなみに、オーストラリア中央部は記録的な降雨量の多さになっているし、ラーメン用などで日本にも、輸出される東オーストラリアの小麦(プライム・ハード)生産地域では、例年より多い降雨量があり(洪水となった地域もある)、一部地域では湿度が高すぎることが心配されるほどです。

(2)小麦生産量(西オーストラリア州)

去年の生産量750万トンに対し、今年度の小麦生産量は(2010.10月末現在で)350万トン程度(54%減)と見積もられています。オーストラリア自国内の消費量は少量なのですが、問題は日本以外の国に対する供給量を考えた場合の、日本向けの量の確保ということになります。

特に、日本と韓国向けのいわゆるヌードル(麺専用)品種の生産量も激減しており、その確保が今後の課題となります。このヌードル品種の生産について、現地の生産者の方にいろいろと話を聞きましたが、今回の干ばつの問題だけでなく、日本の品質規格と生産者のリスク(手取り)の問題、つまり小麦生産者に日本向け小麦生産へのインセンティブをどれだけ与えられるかという点で、現在の日本の輸入小麦買い付けのスタイルにもかかわってくる問題も含んでいると思います。

(3)小麦の生育状況

今年の状況を見ると、小麦が枯れて収穫できないという圃場(畑)の状態ではなく、写真のように小麦の背が低く、正常なら人の腰くらいあるものが、今年は膝(ひざ)位までしかありません。分けつ数も少なく、粒ばりもやや小さめのようです。







※膝までしか高さがない小麦
(通常は腰の位置まである)


注)また、日本と比較にならないほど広い作付面積のため(今回 訪問した農家(1家族+雇用者2名ほど)は8,000ha、4,000ha。ちなみに香川県全体の小麦作付面積は約1,550ha)小麦が収穫されますが、小麦生産者は刈り取りや出荷の際に自らのたん白分析値やスクリーニングを基に配合し、品質の安定化の工夫を行っていました。このあたりの品質分析値を基にした合理的な品質安定化の手法は、とても合理的なものでした。



どうなる日本の食糧の記事一覧