どうなる日本の食糧

最近の食品の価格は上昇傾向にあります。直接的な要因としては、穀物の国際相場の高騰、原油高とその影響で油脂や包材等の値上げその他のコストアップが挙げられます。しかし、それは現在起き始めている「大きな変化」の、表面上の事象とも言えるかもしれません。
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今年4月から施行され、55年ぶりの日本の食糧政策の転換となった「輸入小麦の売渡価格変動制」へ移行した本当の理由と目的という観点から見ると、「方向転換しようとしている日本の食品産業 」という流れが浮かび上がります。

「穀物の価値観」が変わったともいえる、人類が初めて経験する世界の食糧事情の大きな変化。
そして東アジアひいてはアジアの実体経済の一体化に向けて足早に進展し、広域でフラット化しようとしている経済環境の中で、日本の「農」と「食糧」と「食品」はどう進展していくのか。この3つは、以前にも増して非常に密接で、相互に影響を与える関係となってくるはずです。

最近の食品価格の上昇は一過性のものではなく、世界レベルの「新しい”食糧時代”のうねり」の始まりを示していると言えるのではないでしょうか。その「うねり」は、水や地球環境や、地球レベルで敏速に動く経済全体の動向をも包含した、私たち人類が初めて経験する大きくかつ俊敏に動く波ではないでしょうか。

日本は、偶然の一致か、世界の穀物相場の上昇の動きに(少々遅れるタイミングですが)、ほぼ同じタイミングで、新しい方向を目指してこの4月に食糧政策を転換しました。今後、その方向性の変化の影響は、「食」の源流からやがて末端の消費者へと伝播していくことになるでしょう。現在、その現象が「食品の値上げ」という形で現れ始めています。
それは、大きな変化を日本の食品産業や外食産業、それらの関連業界に与え、産業の構造変化をもたらすかもしれません。
最も重要なことは、国際市場の相場の動きが末端の消費者の方々の家計に実質的に反映されていくように食品産業の構造が変わろうとしているいうことです。
単なる「値上げ」ということではなく、今後 相場の状況によれば価格が下がっていく可能性もあるということ。つまり、従来、日本人が長く当たり前に考えてきた「食品の価格はほぼ安定しているもの」ではなく、変動する構造に変わろうとしているということ。

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このことが、はたして消費者にとってプラスになるのか、否か。単に、「値上げ」のことだけでなく、今後のアジア諸国との自由度の高い貿易協定(関税の低い農産物、食品等の貿易)の進展を考えると、現時点では、その答えは非常に難しい。
ただ、国際的な標準からみて、食品価格が変動するそのことだけの是非を問うという段階ではもはや、ないということは言えるのではないでしょうか。
そして今までの日本のスタイルで、国が農産物や食品価格の安定化の下支えをすることは、国際規律上で無理が生じており、今後WTO/EPA/FTAの早期締結を目指す上でも、変革しておく必要がある......という考え方もあるということ。
今起きている変化は、日本がグローバル経済の中で繁栄していくために、食品産業を国際相場等の国外の市場状況に、より連動した構造に移行する必要性の上に立って進んでいるということ.....なのでしょう。

日本は、「食糧」と「食品」の分野で、角を曲がって新しい道を進み始めたということではないでしょうか。


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