日本人の食と健康を知る旅

終戦後、高度経済成長期を経て現在にいたる日本。
食の欧米化が進み、肉類・乳製品の摂取量が増加し、調理で油を使用することも多くなりました。
喫煙・飲酒の影響もさることながら、健康に大きく影響を与える食生活―――
私たち日本人の摂取カロリー・三大栄養素摂取量は終戦後、どのように変化しているのでしょうか。



「一日の摂取カロリー?肉や油が増えたなら当然増えているのでは?」  
皆さんもそう思いませんでしたか?


現代のエネルギー摂取量は終戦直後よりも低い

厚生労働省が1946年から毎年実施している「国民健康・栄養調査」を元に
最新2016年までのデータをまとめると以下のようになりました。




70年前と比べるまでも無く、安定した食糧が手に入る現代。1970年を境に、手軽に食べられるインスタント食品やファストフード、栄養摂取を目的としない清涼飲料水や菓子類といった嗜好品など、戦後にはなかった食品が多く登場しました。

一時は摂取エネルギー、三大栄養素摂取量は共に急激に増加していたにも係らず、昨今の数値は終戦直後(昭和20年代)の貧しかった時代よりも下回っています。
一日摂取エネルギーの1946年1903kcalと2016年1865kcal。その差はたったの50kcalですが三大栄養素の摂取量は100gも違います。そして、タンパク質・脂質・炭水化物の摂取内訳も大きく異なります。

一体何を食べているの?

多くの食品が手に入る現代で、私たちは何を食べ、何を食べなくなったのでしょう。
ここで、三大栄養素別の摂取量を確認してみましょう。



タンパク質や脂質は戦後と比べると増加しましたが、炭水化物摂取量はいまだ下がり続けています。  
脂質は1gあたり9kcal、炭水化物は1gあたり4kcalです。脂質の増加量以上に炭水化物の摂取量が減少していることで全体の摂取エネルギーが減少しています。  

「どんな食べ物でも過剰摂取はよくない」と耳にしますが、逆は問題ないのでしょうか。  
つまり、炭水化物の摂取量がこれほどまで減少し、不足という形で体に影響は出ていないのでしょうか。  
「低糖質ダイエットは良いのか」は今後の更新にて。


食生活を振り返る

現代の日本人の摂取エネルギー量は戦後よりも少なく、 資質の摂取量が増えた一方で炭水化物をあまり食べなくなったことが わかりました。

さて、この傾向 厚生労働省が提示する 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」と比較すると良いのでしょうか、悪いのでしょうか。



以下がエネルギー比率 推奨値です。



戦後は栄養が炭水化物に偏っていましたが、現在は脂質もタンパク質もバランスよく    
取れていることが下のグラフからわかります。  



しかしここで大きな落とし穴が...



全体で見るとバランスのよい食事ができているように見えましたが、年齢・性別の内訳を確認してみるとどうでしょう。

成人の3割以上、20~29歳の女性にいたっては過半数が推奨量より多くの脂質を摂取していたのです。


世の中には食生活に関して様々な知見があります。高タンパク質、低糖質、低脂質...どれが正しいか気になりますね。そこでまずしなければならないのは自身の食事状態を知ること。  

摂取エネルギー・三大栄養素摂取量だけを確認すると、食べ過ぎは減少しているかのように見えます。
栄養バランスだけを確認すると、70年前より三大栄養素の偏りが改善されているかのように見えます。
しかし、現代人の生活習慣病は増加する一方です。

今ほど食の選択がなかった数十年前は個々の食生活は類似しており、人々の間で大きな差はなかったのではないでしょうか。現代人はというと、理想的な食事をする人々もいる一方で、食生活の乱れが目立つ人々もいます。食を自由に選べる今だからこそ、食べる時間・量・種類は人それぞれで、平均値に隠された上限・下限の大きな開きがあるのかもしれません。

インスタント食品に過度に偏ったり、スナック菓子で食事を済ませてしまったり。
推奨量や平均値と比べて過剰摂取しているものがあったり、不足しているものがあったり。  

食事は食べる内容(質)だけでなく、量や回数、時間帯によっても吸収が左右されます。  
健康のために何かを変える前にまず、自身の食事を見直してみましょう。  


参考 厚生労働省 「国民健康・栄養調査」ほか



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